年末に空の境界を読んだ。流石に面白く、一気読みした。
自分はFateシリーズをいくつか知っている程度で型月にはそこまで詳しくないです。お手柔らかにお願いします。
・織について
両儀式はかつて二重人格者であった。二重人格というのは説明用の言葉であって、正確な実態は異なる。だがとにかく式の中には織という人格が在った。陽性の性格で、人を殺すことしか知らず、夢を見ることが大好きな織…
知らない。空の境界とはそんな話だったのである。私にとって空の境界はfgoコラボに時々出る作品で、主人公は直死の魔眼という超絶かっこいい異能と、着物の袖をブルゾンに仕舞い込む特殊能力を持った女性らしいということだった。
だが空の境界は異能バトルという側面以上に、式の正体という謎に迫るミステリ小説の側面が強い。自分とは何かという10代っぽい問いが、殺人事件の犯人が自分かもしれないという不安と、恋愛感情の出どころという二つの切り口から語られていく。
この恋愛感情の出どころというところが問題で、初めに空の境界のもう一人の主人公、黒桐幹也に好意を寄せていたのは男性人格の織なのである。BLだ!!!!(ただ実際は、織と式が好意を寄せ始めたのは同時なのだろうけど…)
黒桐は黒桐で、式が男性であっても女性であっても好きだろうという表明をしている。この辺、体とか精神とかの性別に限らず好き、という非常に二次創作BLっぽい話の仕方をしていて面白かった。この辺は性別、恋愛対象に対してかなり雑な描写だったので、かなり前の作品ということを差し置いても気になる部分はあるものの…
・式の口調について
式が織のことを覚えていてほしいから、織の口調を真似しているという話、すごい。これでは恋愛感情の出どころが余計不明瞭になってくる。下手をすれば式が亡くなった織の代理として黒桐と関わり、織の見た夢を叶えるために恋愛をし、一方で殺人鬼である織を嫌悪し、織という存在を上書きするために口調を真似し…みたいな、男性2女性1の愛憎の話みたいに思える。
とはいえここは設定の方に先回りされていて、式と織は根本的に同じ人物で、二人の願いは共通しており、どっちが発言したか区別するのは無意味、ということになっている。危ない危ない。誤解するところだった。
話は変わるが、橙子さんの言う口調というのは外向けの人格を形作る要素であって、本質には関わりない(うろ覚え)という話も面白い。一般的には、乱暴な言葉使いをしていれば気持ちも荒んでくるものではないだろうか。式が男っぽい口調なのは他人に織のことを覚えておいてほしいからで、それは外へ向けたものなのだろう。しかし一方で、脳内にいる他者であった織を亡くした式は、自分でその喪失に耐えられず、口調という面影にすがった…という考え方もできると思う。もう一人の、殺人衝動の元凶にいてもらわないと困る。孤独が辛い。だから自分に他者の人格を移したい、でも、口調を真似るだけでは本質は得られない… 今気づいたけど橙子さんが言う本質って起源の話なのか?わからない。暇な時もう一度読んでみたい。
もう少し軽いキャラ萌えの話として、一人称俺でザンバラ髪、中性的な美貌の両儀式はすごくかっこいいし、性別不明瞭な部分の魅力って大きいんだなと改めて思う。身体も精神も完全に女性である、と言い切られているのがもったいなく思えてくるほど。
あと黒桐にも色々思うところがあるんだけど、今日はこの辺で終わります。
